ライター:一色先生
2021.08.25
はじめまして^^
トッシーこと、「といろデザインスタジオ」代表の一色俊秀といいます。
コクヨのオフィスデザイナーとして42年間勤務した後、2019年に独立しました。
そして…
今年の8月から「オフィスの広場」理事に就任しました。
今月から毎月、オフィスやオフィス業界に関する記事を担当することになりましたので、よろしくお願いします。
今回は第1回になりますが、8月4日に日経ニューオフィス賞が発表されましたので「日経ニューオフィス賞の概要と、受賞オフィスの傾向」について紹介したいと思います。
私自身、日経ニューオフィス賞への応募支援というかたちで2000年ごろから関わっていますが、コクヨのデザイナーとして(2019年からは外部パートナーとして)お手伝いしたオフィスでは、日経ニューオフィス賞推進賞の受賞が25件、そのうち5件が経済産業大臣賞を受賞しています。
今回お伝えしたいことは大きく4つです。
1.日経ニューオフィス賞の概要
2.期待される効果
3.審査の視点
4.2021年受賞オフィスとその傾向(キーワード)
おまけ:その他オフィス関連の賞
日経ニューオフィス賞の概要
日経ニューオフィス賞は、1988年「ニューオフィスづくりの普及・促進を図ること」を目的に、「創意と工夫を凝らしたオフィスを表彰する」という趣旨で始まりました。
主催は 日本経済新聞社と一般社団法人ニューオフィス推進協会(NOPA)。
当時の日本企業のオフィスは劣悪な環境のオフィスが多く、オフィス環境をよりよくすることで企業の競争力を高める意味合いもありました。「オフィスづくりのベンチマークを見つける」、という思惑もあったんですね。
応募対象は、応募年の3月末までに実際に使用されているオフィス。
応募期間は、例年4月1日~5月中旬ごろまでとなっており、発表は8月上旬です。
日経ニューオフィス賞には、毎年120件~140件ほどの応募があります。地方ブロックごとに書類選考で半分ほどに絞られ、現地審査に進みます。その後全国大会で選ばれた上位16件がニューオフィス推進賞、さらにそのうちのトップが経済産業大臣賞、つまり全体の一位です。また、16件のうち例年2~4件がクリエイティブオフィス賞として選ばれます。ほかにも地方ブロック推進賞、奨励賞などがそれぞれ決まっていきます。
クリエイティブオフィス賞が設けられたのは2007年。快適性だけでなく、組織としての
創造性を高めるオフィスの事例が表彰されるようになっていきました。
期待される効果は?
では受賞するとどんな効果があるのでしょうか?
最も大きい効果は、対社外では、PR効果ですね。マスコミでの露出が増えるためリクルーティング効果は、かなり高くなります。
では対社内はどうでしょうか。実は社外的な効果より社内に対する効果の方が重要だと筆者は考えます。
ニューオフィス賞に応募するということは、その企業がどこを目指して、何を大事にしているか、どんな働き方にするのか、そのためのオフィスをどう構築したのか。全員が理解しておく必要があります。また、働きやすい快適な空間になるのでモチベーションも高くなる。そうなるともっとオフィスをいい状態に維持しておこうと、運営維持意識もおのずと高まります。それは結局、組織としての知的生産性向上につながります。
審査の視点
公式サイトの募集要項では下記の5つが示されています。
1.快適性/機能性
2.創造性/情報共有
3.エコ/社会貢献
4.維持管理
5.セキュリティ/BCP
ニューオフィス賞初期のころは「快適かつ機能的なオフィス」のベンチマークを求めていましたが、今は企業にとっての「創造性発揮のための工夫」が大きく問われています。
日経ニューオフィス賞も今年で34年目になりますが、当時はオフィスというより“事務所“。仕事をするためにミカン箱に電話があればいい、なんて考え方が浸透していた時期です。ですから始まった当初は「快適なオフィスの工夫」を凝らしたオフィスが表彰されていました。
「快適オフィス」の”快適“を簡単に説明するのは難しいですが、当初言われていたのは、【3000万人のオフィスワーカーが生活時間の相当部分を過ごす場であるオフィスを、快適かつ機能的なものに】として、オフィス環境を良くするすなわち「オフィス3悪」を無くそう、という動きをしていました。
「オフィス3悪」とは、、
1)固くて冷たい床
2)むき出しのまぶしい蛍光灯照明
3)座り心地の悪いビニールレザーのイス
このニューオフィス運動があってから、床のカーペットやルーバーの入った眩しくない天井照明、人間工学によって作られた事務用回転イスが広く普及していきました。
ちなみに、全国の審査委員は11名。オフィス業界の重鎮の方々で構成されています。建築、ビジネス、オフィス専門の大学教授、ビジネスコンサル、インテリアデザインなど日本を代表する先生方です。
2021年の日経ニューオフィス賞受賞オフィス
ニューオフィス推進協会(NOPA)のホームページで紹介されています。
https://www.nopa.or.jp/prize/contents/congratulation34.html
日経ニューオフィス賞受賞オフィス16件のうち、経済産業大臣賞に輝いたのは「KADOKAWA 所沢CAMPUS」。クリエイティブオフィス賞は今年は下記4件でした。
「三井物産本社ビル」
「大成建設ウェルネス作業所赤坂中学校」
「ZOZO本社屋」
「日東システムテクノロジーズ本社オフィス」
16件の内訳は関東ブロック11件、近畿ブロック2件、北海道ブロック、中部ブロック、九州ブロック各1件でした。
参考までに、地域ブロックの推進賞受賞オフィスは下記になります。
日経ニューオフィス賞受賞オフィスのキーワードは?
それでは2021年の日経ニューオフィス賞を受賞したオフィスにはどのような傾向があるでしょうか。筆者が考える個人的見解ですが、2~3年前ぐらいまでのキーワードと比較するとこのような感じになります。
①イノベーション・共創
最近は創造性だけでなく、イノベーティブな成果のあるオフィスが求められています。企業内だけでなく、外部との交流を促進するような仕掛けがキーになります。
②ニューノーマル
昨年からのコロナ禍もオフィスにづくりに大きな影響を与えています。今年の受賞オフィスは、コロナ禍のピンチをチャンスととらえ前向きにニューノーマルな働き方を模索し、具体化しているオフィスが受賞していると感じました。
「KADOKAWA 所沢CAMPUS」や「ZOZO本社屋」は積極的に次世代の働き方を追求し、それにふさわしいオフィスを構築していますね。
③ウェルネス
健康経営に注力する企業は増えてきていますが、より積極的にウェルネスとしてどうあれば、より社員がハッピーに働ける企業としての生産性向上につながるか、といった取り組みも見られるようになっています。
(大成建設ウェルネス作業所赤坂中学校)
④地域活性化
今年の受賞オフィスのもう一つの特徴は地域活性化です。地域共生というよりもっと踏み込んで地域の活性化に貢献しようという企業姿勢でオフィスづくりを行っている企業も増えてきました。
(KADOKAWA所沢CAMPUS、ZOZO本社屋)
⑤サステナブル
より大きな視点で地球環境のために何を行えばいいかといった取り組みも、より顕著に見えてきています。
(サンスターコミュニケーションパーク、I-PEXキャンパス本館)
以上、今回は日経ニューオフィス賞の概要と今年の受賞オフィスの傾向について紹介しました。
♪ ♪ ♪
最後に、オフィス関連の表彰について他にどのようなものがあるかをご紹介して終わりにしたいと思います。
その他のオフィス関連の表彰
●ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)
FM手法により優れた成果を挙げている法人・官公庁・団体の活動や、FMの新しい技術への取り組みを表彰。
主催:社団法人日本ファシリティマネジメント推進協会(JFMA)
●グッドデザイン賞
約半世紀に渡る国民生活の向上と産業の発展を求めてきたデザイン賞。人間(HUMANITY)・本質(HONESTY)・創造(INNOVATION)・魅力(ESTHETICS)・倫理(ETHICS)を審査理念とする。
主催:社団法人日本産業デザイン復興会
●日本サインデザイン賞
日本で唯一のサインデザインに関する顕彰事業。質の高いサインデザインを審査。
主催:公益社団法人日本サインデザイン協会(SDA)
●日本空間デザイン賞(2019年誕生)
「2019年、JCD(日本商環境デザイン協会)とDSA(日本空間デザイン協会)はそれぞれ永きにわたり開催してきたデザインアワードを合併し、日本空間デザイン賞という日本最大級の空間系アワードを誕生させました。」(HPより引用)
以上です!
今後ともどうぞよろしくお願いします。
トッシーでした。
Information | ★編集長/セッキ―より★
オフィスの広場の理事でありオフィスのソムリエでもある、トッシーこと一色俊秀氏は、過去の記事にも登場しています! 【気になるこの人!】一色俊秀:コクヨ/“オフィスカイゼン委員会”カイゼンマン「全国のカイゼンを共有し、日本のオフィスを活性化したい!」 【気になるワダイ!】快適なオフィスの維持管理が社風にも影響!「オフィスカイゼン委員会」 また、2019年にはスケッチパース教室の講師としても登場していました! ■講座案内■一色スケッチパース教室~誰でもすぐにマスターできるパース作成 初級講座~【2月/全3回】 空間づくり、デザインのプロとして数々の経験を積んできたトッシーへの質問も募集していますよ! ぜひ今後とも、トッシーをよろしくお願いいたします^^ |
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ライタープロフィール
コクヨに42年間オフィスデザイナーとして勤務。オフィスデザインだけでなくオフィス研究やオフィス運営維持活動も担当。オフィスやカイゼンに関する講演は全国で50回以上実施している。2019年にはデザインスタジオを開業。オフィスのコンセプトづくりやコンペ提案のアドバイスを対応。
水彩画家として個展やカルチャースクールの絵画講師、公募展への応募なども行っている。2020年には初出品した水彩画が日展入選。はやくスケッチ旅行を再開したい。
ライタープロフィール
コクヨに42年間オフィスデザイナーとして勤務。オフィスデザインだけでなくオフィス研究やオフィス運営維持活動も担当。オフィスやカイゼンに関する講演は全国で50回以上実施している。2019年にはデザインスタジオを開業。オフィスのコンセプトづくりやコンペ提案のアドバイスを対応。 水彩画家として個展やカルチャースクールの絵画講師、公募展への応募なども行っている。2020年には初出品した水彩画が日展入選。はやくスケッチ旅行を再開したい。
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