ライター:セッキ―
2025.10.10
子どもを育てるようになって何度も聞いたことばですが、
「子どもが楽しむにはまず親が楽しんでやらないとね」
介護業界でもまさしく、
「介護をする側が幸せでないと、介護を受ける側を幸せにはできない」
そんな思いから、本気のウェルビーイング経営に乗り出したのが、東京都内・神奈川県を中心に介護付き有料老人ホ一ム「アライブ」の企画・運営を行う、株式会社アライブメディケアさんです。
「ウェルビーイング」の概念を経営に取り入れることで3期に及ぶ赤字経営からV字回復しました。
今号では、そんなアライブメディケアさんの、社員の幸福度を評価制度に取り入れるという画期的な施策について、お伝えします。

厚生労働省のデータによれば、来年(2026年度)には約240万人、2040年度には約57万人の介護職員が不足するといわれているそうです。
介護職に従事するタイプの人材は、相手のためを思いすぎて自分のことをおろそかにしてしまう人も多い……。体力的な辛さだけでなく精神的な大変さも、私たちの想像できる範囲を超えています。でも、人を相手にした職種だからこそ、そのスタッフの心が満たされていなければ、心のこもったケアがどんどんできなくなってくる気がします。

■3期連続の赤字経営からの脱却
アライブメディケアさんは、2014年頃から組織内の慢心や業務のマンネリ化により業績が低迷し、2017年から2019年にかけて3期連続の赤字に。現場の声が経営陣に届かない状態や現場と経営陣の価値観の違いといった課題も浮き彫りになっていました。
そんな状況の中、2021年に代表取締役に安田氏が就任、「再生」を掲げ、大胆な経営改革に乗り出したのです。
まず、全社員に経営状態をオープンにし、現場の声に耳を傾け企業理念も刷新しました。ゼロから会社を作り直す覚悟で取り組む中で、大きな柱となったのは「ウェルビーイング経営」。月に一度、経営者と職員対話の場で「ウェルビーイング経営」のディスカッションを行い、さらにウェルビーイングに関する研修は、およそ2年間で13回の実施だそう。
様々な取り組みの結果、2021年には0.2%だった営業利益が、2024年10月には6.5%までに向上。また離職率に関しては34.3%が14.1%にまで低下し、今年2月にはホワイト企業大賞の受賞を果たしているんです。

■社員の「幸福度」が人事評価に
「介護現場の生産性は、いかに一人ひとりの心の状態、健全なチ一ム状況に左右されるのか実感しています。そのため、知識や技術だけではなく、相手の気持ち、想いを理解できる人材を育てていくことが最も重要だと考えています。」
このような社長のお考えのもと、導入されたのが「幸福度評価」!
これを人事評価の項目の中に組み込んでいるというのです。
その評価内容には、ウェルビーイング研究の第一人者の前野隆司教授*が提唱する「幸せの4因子」を取り入れているのだとか。
◎やってみよう因子
◎ありがとう因子
◎なんとかなる因子
◎ありのままに因子
こちらがその幸福度評価の表です。詳しく見てみましょう!

【やってみよう】の項目を比較してみます。
・レベル1
「言われたことは最低限行うが、状況の変化に対応できず、成長意欲がない。自分の強みがわからない」
・レベル5
「目標に向けて努力や挑戦をすることを苦と思わず、成長と自己実現が喜びとなっている」
【なんとかなる】の項目では、
・レベル2
「変化を前向きに受け入れることが難しい場合がある 失敗を恐れて 消極的な立場でいることがある 挑戦ができていない」
・レベル5
「変化を積極的に受け入れ、周囲を巻き込み、主体的に取り組み、チームに具体的な成果をもたらしている」
なるほど!こういうことですか。ここまで言語化されているとわかりやすいですね!
チャレンジ精神、感謝、調和、前向き、あたりがキーワードになっている印象です。
同社の評価軸は【知恵・意志・情愛】の3本柱。この幸福度評価が、同社の全評価軸の3分の1を占めていることになります。
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1.ハードスキル(業務の技術や知識)」…【知恵】
2.バリュースキル(会社の行動指針実践度)【意志】
3.ソフトスキル(幸福度)」【情愛】
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■このほかにも導入された手法
1)認知行動療法(CBT)を参考にしたマネジメント
認知行動療法(CBT)とは、ストレスなどで固まって狭くなってしまった考えや行動を自分の力で柔らかくときほぐす心理療法のこと。同社では、最長6カ月の期間で、毎週外部講師の講義を受講。少人数でのグループワークを実施しているそうです。
これにより、「過剰な気遣いにより控えめだった社員が、感情のゆがみをなくしていくワークなどのステップを踏んでポジティブ思考になり、最終的にはリーダーに昇進した」との事例も!
すごい結果が出ていますね。
2)トークノートによる感情のストーリーを共有
スタッフ全員がコミュニケーションツールを用いて、入居者との日常的な出来事などを共有。ほかのスタッフからの反応はスタンプで可視化され、好事例をマネしていく風土が作られていきます。話す側も聞く側もハッピーになっていく仕組みですね!
(画像引用元)

まとめ
これまで筆者は多くの会社に在籍してきましたが、ここまでわかりやすく言語化されている企業は初めてのように思います。社員の幸福度はもちろん、顧客満足度調査でも、同社スタッフのケアを通じて幸せを感じることがあると回答した方は7割以上という結果がでたそうです。素晴らしい結果ですね。
挑戦できない、前向きになれない社員には評価が下がってしまいますが、それが悪なのではなく、認知行動療法によって気持ちが上がっていくためのチャンスをしっかり提供してサポートしている、という点にとても共感を覚えました。
全企業が取り入れたらいいのに!とも思いました。
自分が介護を受ける高齢者になったら、アライブメディケアさん、よろしくお願いいたします!
| Information | 株式会社アライブメディケア
https://www.alive-carehome.co.jp/corp/outline https://www.alive-carehome.co.jp/ *所 在 地 : 東京都渋谷区神宮前6-19-20 プレファス神宮前3階 *代表取締役 :安田雄太 *設 立 :1980年6月 *従業員数 :419名(2024年4月現在/非常勤スタッフ含む) *事業内容 :介護付きホ一ムの企画・運営(東京・神奈川で11のホ一ムを運営) *参考情報: 前野隆司先生/武蔵野大学ウェルビーイング学部長・慶應義塾大学名誉教授 情報共有プラットフォームTalknote(トークノート) |
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セッキ―
ライタープロフィール
2014年入社、当社で初めてライターに挑戦。キャリアのスタートは銀行員、その後リクルートグループ、大手税理士法人、スポーツアパレルなど複数の事業会社で管理部門、企画部門、秘書などを経験しながらカルチャーショックのシャワーを浴びまくる。2度の高齢出産を経て復職し、現在家事・育児・リモートワークに奮闘する毎日。無類のコーヒー好きで趣味はハンドメイド。整理収納アドバイザー(準一級)、防災士。いつかはインタビューされる側になりたい!
セッキ―
ライタープロフィール
2014年入社、当社で初めてライターに挑戦。キャリアのスタートは銀行員、その後リクルートグループ、大手税理士法人、スポーツアパレルなど複数の事業会社で管理部門、企画部門、秘書などを経験しながらカルチャーショックのシャワーを浴びまくる。2度の高齢出産を経て復職し、現在家事・育児・リモートワークに奮闘する毎日。無類のコーヒー好きで趣味はハンドメイド。整理収納アドバイザー(準一級)、防災士。いつかはインタビューされる側になりたい!
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