ライター:セッキ―
2023.01.26
ポニーキャニオンさんでの取材は今回で4度目となりました。
今回はお会いしたときからずっと“気になって”いた、総務部門の責任者でいらっしゃる、古宇田(ふるうた)隆之助さんです。
※正式な肩書は記事最後部プロフィール欄にて
何が気になっていたかって?
25年もの間、営業やマーケティング畑で実績を積んできた方がいきなり大規模移転プロジェクトのタイミングで総務の責任者に抜擢されるなんて、、、気になります!2019年本社オフィス移転に続き、2021年オフィス改革プロジェクトでも成果を上げていらっしゃるんです。取材を受ける際の物腰の柔らかさや、パートナー企業への深い感謝の気持ちが言葉のはしばしに染み出していました。
その「人への向き合い方」はどこで学ばれたのか?
総務に抜擢されたときの気持ちはいかなるものだったのか?
たっぷり聴いてきましたよ!
(全然記事におさまらないくらいでした…涙)
――御社とオフィスの広場は、2019年に移転された際のオフィス取材時からのお付き合いになります。その移転PJで初めて総務の責任者を任されたとのことでしたが、それまでのご経歴から、教えてください!
古宇田さん(以下、敬称略):大学卒業後、92年4月に入社しました。大阪支店に配属され、当時全国で1万店ほど存在したレンタルビデオ店へのセールスマンとして、兵庫県、徳島県、香川県を担当し約4年。
――では95年の阪神の震災もご経験を?
古宇田:はい。担当していたお店もだいぶ被害を受けまして、交通も遮断されていました。営業車で行けるところまで行って、東京から取り寄せたお水やカイロ、ガスボンベを配ったり、落ち着いてからは車で神戸の小学校に子供向け(ディズニーアニメ)のビデオカセットと大きなTVモニターをもってボランティアに行ったりもしました。
96年からは東京に戻り、販売促進・営業企画の部署(営業部)に配属になりました。セールスプランナーとして8年ほどの後、ディズニー作品の専任部署で3年半、映画のプロモーション部隊で2年、邦画の製作とフジテレビ映画を扱う部署で調達の窓口を2年、、、と2010年まで目まぐるしく働いて、とうとう体調不良になりました。
――わぁ、、、悪い予想が当たってしまいました。
古宇田:原因不明の椎間板ヘルニアで一時寝たきり状態になりまして、テレワークとかもない時代ですから1カ月半ほど会社を休みました。普通に歩けるようになるまで半年くらいかかりました。
近所の鍼灸院や療法院に通ったお陰でなんとか回復して、2011年2月にまたマーケティング部に戻ります。
国内のドラマやキッズ向けの番組、それまでほとんど触れて来なかったアニメも担当しました。当時は『けいおん!』が大ヒットした直後だったり、『進撃の巨人』が企画段階だったり、その後には書籍流通の開拓を任されたり、とにかく一からいろいろと勉強させてもらいましたね。
その部署の中でもまた異動を重ね、そこから3年ほど過ぎた2017年のことです。当時の総務部兼内部監査室の部長に、という内示をもらったんです。
――本当に総務経験なしでいきなりの抜擢だったんですね。理由はきかれましたか?
古宇田:残念ながら理由は聞いてないですし、いまだに謎です(笑)。ほんとに軽い感じで当時の上司から内示を受けました。
さすがに衝撃でしたし、色々な感情が渦巻いて、しばらく凹みました。
営業やマーケでは長年やってきた自信もあったし、『総務部長』というプレッシャーもすごくて、受け止めるまでに1週間くらいかかりました。でもいつまでもうだうだ言っていられないので、とりあえず「総務の仕事」みたいな本を買ってきて読んで…途中でなんだかわからなくなって一度しまって…(笑)
――しまったんですか(笑)
私から見ると古宇田さんを総務に抜擢したその采配がすごいなと思います。これまでの何かを、古宇田さんに変えて欲しいという想いがあったのではないかと。
変わったことと変わらないこと
――今までの仕事とは全然違うわけですが、総務の仕事はどう思われましたか?
古宇田:まず年間行事の多さ。営業やマーケでやってきたルーティンとは違って、1年のサイクルに慣れるまでに数年かかりました。日常的にはささいなことから大きなことまで、社員から来る問い合わせや相談事に丁寧にこたえていく、というもう日々の積み重ねですよね。
――営業やマーケでは社外との折衝が多いですが、急に社内に目を向けるようになったわけですよね、ご自身でも変化はありましたか?
古宇田:そこは基本的に変わらないと思っています。「対“ひと”」という点で。映画や音楽作品のメーカーである我々と、いわゆるお店の立場は、本来対等でなければなりません。社員と向き合うときに、我々総務もフラットでないといけないと思うんです。自分が一番嫌なのは“偉ぶる”ことなんです。”総務部長”という立場であるがゆえに偉いと思われがちですけど、別に偉くないのでね。
――抜擢された理由がわかる気がします。
古宇田:社員たちがどうしたら動きやすく、気持ちよく仕事をさせてあげられるのか、それは現場の話を聴かないとわからない。営業に置き換えれば、お店の方の話を聴くのが自分の仕事だった。お店の人の意見と、制作側の主張、双方をよく聴く。それが社内になっただけ、と僕は思っています。
――総務に来られて約5年、オフィス移転は一番の大仕事だったと思いますが。
古宇田:無事に移転できて本当によかったです。なにより、異動してから最初に言われたのが、「あなたの仕事は移転です」だったんです、もう頭が真っ白。物件探すところからでしたからね。物件ってナニ?みたいな(笑)。
――オフィス移転では、特に参考になった情報などありましたか?
古宇田:同業他社さんは大変参考にさせてもらいました。そこは営業やマーケ時代からのリレーションを頼りに、各社の総務の方をつないでもらって、とにかく訪問させてもらっていいところを取り入れて。なので、逆に移転予定のある企業さんからご希望があればいつでもご案内しています。最近も大勢で来られましたよ。喜んでもらえるのが僕の喜びなので。
――社員さんたちからも喜んでもらえましたか?
古宇田:はい、廊下やエレベーターで会ったときなどに、何人もの人から「素敵なオフィスにしてくれてありがとう」「私たちの声を形にしてくれてありがとう」って声をかけてもらって。最大の達成感を味わいました。
(同席していた広報の)長田さん(以下、敬称略):実は、最初の提案に対して、移転プロジェクトチームがNOを出したんです。役員まで全員OKだった案に対して。多方面に影響が出るので、間に入る立場として相当大変だったと思います。私たちは古宇田さんになんでも言えるので好き勝手言ってしまうんですけど…
▼広報担当/長田さん(左)と、山下さん
古宇田:ありましたね、たしかに(笑)。いや、言ってもらうのは全然いいんですよ、むしろ全部言って欲しい。それを実現できた方が嬉しいじゃないですか。それが苦になるかというと全然苦じゃなくて。
――あー古宇田さんは“ドM”と見ましたね。
<一同、爆笑>
長田:難題のほうが燃える、みたいなことですかね(笑)
古宇田:それは気づきませんでした…(笑)とにかく人の役に立ちたい、という想いが強いんです。それに尽きます。現場の想い、設計をしてくださったデザイナーさんの想い、役員の想い、きちんと話を聴けば必ず落としどころはある、何とかなるでしょ、ってどこかで思ってるんですよ。
長田:誰に対しても低姿勢ですし、あまり怒ることがないんですよね。あ、でも怒ってるな、というときはわかります(笑)。
――(笑)どんな時に怒るんですか?
長田:無礼な人に対して、ですかね。野球部でも活躍して頂いてますが、相手チームの人が無礼だったりするとすごく怒ってます。
古宇田:ああ、そうですね。
例えば、若い社員が目上の人に対して非礼をはたらいたりすると、必ず呼んで注意するようにしてます。
――ちょっと、体育館裏来い、、、みたいな?笑 それってその人はその後変わっていきますか?
古宇田:大体変わってくれると信じています。大事なのは、叱りっぱなしにせず、次に会ったとき必ずフォローすることだと思っています。
以前指導したことのある者が、最近マネジャーになったんで、廊下で見かけたとき「期待してるよ、頑張ってね!」と声をかけました。
――自分のことを気にしてくれている、という気持ちになりますね。
受けた恩は返したい
―生き方を変えたできごと
――古宇田さんのその姿勢はどこからきているんでしょうね。人との向き合い方というか。
古宇田:これは、、、ここだけにしていただきたいんですけど…
実は僕、結構ひどかったんです、昔。
――えっ、意外です。
古宇田:家庭環境は、父が自動車修理工場を経営していて、母と姉・僕・弟の3人きょうだい。父が8人きょうだいで全員田舎から連れてきて養っていたので、親戚だらけの大家族でした。いとこが全部で23人いるんですから(笑)。
生きる姿勢を変えることになった大きな出来事のひとつは、僕が13歳のときに9歳の弟が白血病で亡くなったこと。そして、高1の終わりごろに父を過労で亡くしました。
中学生の頃は調子に乗っていて、学校自体も荒れていましたし、いわゆる“不良”っぽい子たちと仲良くしてました。喧嘩と聞けば加勢しに行ったりして。
それで高1のときに学校で騒動を起こしてしまったんです。大事な友人をいじめていた奴のことをどうしても許せなくて…ちょっと大きめの喧嘩に発展して相手に大迷惑をかけてしまい、当然親に連絡が行きますよね。薄汚れた作業着のまま飛んできた父は、とにかく謝り倒してました。それなのに、帰りの車の中で一言も僕を責めなかったんです。「お前が正しいと思ってやったことだろう」と。
その数か月後です、深夜に仕事で出かけていく父を見送りながら「無理しないでね」と声をかけたのを最後に、3月の寒い朝、車中で父は亡くなりました。
――なんという・・・お辛かったですね。
古宇田:自分の行いを悔いて悔いて悔やみまくりましたね。家族を亡くした悲しみと悔しさと、寛大な心で最大の理解者であった父への感謝。そこから、もう決して人を傷つけない、と誓ったんです。
――それで、人への向き合い方が優しくなっていったというか。
たぶんそれまでの、手触りで言ったらトゲトゲ、とかザラザラっていうのがはずれていった感じですよね(笑)。
高校はやめるしかないと思っていましたが、叔父たちの優しい言葉で前を向くことができて、付属の大学に進学した後は、とにかくバイト三昧です。4年間すし屋さんでありとあらゆることを学ばせてもらいました。洗い場から始まって、シャリ炊き、ホールで接客を学んで、そのうち調理場で軍艦や巻物、握りなどの製造にも関わらせてもらって。そしてそれをお客さんに食べてもらって喜ぶ顔を見る、そのプロセスが楽しくて、あっという間に時間が過ぎました。
後輩たちの教育をするのも楽しかったですし、新店がオープンしたら必ずヘルプ要員として呼ばれて。最終的には店長で来てくれ、と言われたくらい信頼していただきました。
――家族の優しさに救われて、働く楽しさを覚えて。そこで培われたんですね、周囲をよく見て動くとか、チームビルディング的なこととか。古宇田さんは人が好きなんでしょうね。
古宇田:それはあるかもしれませんね。とにかく自分が受けた恩は返したい。人の役に立ちたい、という想いは強いです。
経験がなくてもやり切れる?
総務に必要な素養
――そんな古宇田さんにお聞きしたいんですが、総務ってどんな人に向いているんでしょうね?
古宇田:検索してみたらいろいろ出てきましたよ。
――検索したんですか!笑
古宇田:例えば、
・裏方で人の役に立つのが好き
・物事を同時に進められる
・白黒をはっきりさせない
・臨機応変
・社内で顔が広い
・会社のことに詳しい、などなど… (※古宇田さん調べ)
――「白黒をはっきりさせない」、なんですね?
はい、融通をきかせられる、というんでしょうかね。
例えば、『○○を××したいんですけど…』のような、ちょっと判断が難しいような相談を受けたとして、それに対して「絶対ダメ!」ですぐ終わりじゃなくて。事情をしっかり聴いたうえで、じゃあこれだけは守ってね、あとはおれが調整するから、みたいな。かといって毎回全部OKするわけにはいかないですよね、だから話をちゃんと聴かなきゃダメなんです。
――わかります。杓子定規すぎないように、ということですね。で、古宇田さんは、、、
古宇田:意外と当てはまってるのかもなって思いました(笑)
――さすがです(笑) やはり采配した人のお考えを聴いてみたい(笑)
営業やマーケの部門でも、総務部長になっても、一貫して古宇田さんが大事にしてこられたことが、人の話を聴く、という姿勢なのかなと思いました。検索には出てこなかったですが。
古宇田:だと思っています、ほんとに。とにかく「聴くこと」です。
――今後やりたいことについてお聴きしたいです。
古宇田:ずばり、健康経営です。会社として色々と取り組みを始めて1年ほど経ちますが、来年度(2024年)の健康優良法人に認定されることが目標です。僕自身は衛生管理者の資格を取ったことと、社員のメンタル面もしっかりサポートしていけるよう、メンタルヘルスケアに関する資格も取得しました。
社員からもやりたいことが出てきていて、それらを一つひとつ実現していき、いい会社にしていきたいです。もちろん採用にもプラスに影響しますし、長時間労働も極力減らしていきたいし、長年在籍した社員が辞めないでいてくれることも大事。心身とも社員の健康が一番ですから。
――大事ですよね、目標って。ますますのご活躍、期待しています!
今日はありがとうございました!
プロフィール | 古宇田 隆之助 ふるうた・りゅうのすけ
株式会社ポニーキャニオン 人事総務本部 人事総務2部 部長(兼)内部監査室 室長 1970年東京生まれ、1992年ポニーキャニオン入社、大阪支店に配属されレンタル営業を担当。96年からは東京本社にて営業部、映画事業部、マーケティング部など一貫して営業・マーケティングの分野に従事。2017年総務部長を任命され、全くの未経験ながら20年以上を過ごした本社オフィスの移転プロジェクトを任される。社員の意識改革とともにイノベーションを生み出す新オフィスが2019年完成。1年後のオフィス改革プロジェクトにおいてはABW、フリーアドレスを導入しコロナ禍による働き方の変化に対応したオフィス構築を実現。現在は健康優良法人認定を目標に精力的に活動。第二種衛生管理者、メンタルヘルス・マネジメント(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ種)資格取得。 趣味:野球、スポーツ観戦全般、飲酒… 特技:寿司を握ること |
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ライタープロフィール
整理収納アドバイザー(準一級)、防災士。2014年入社、当社で初めてライターに挑戦。キャリアのスタートは銀行員、その後リクルートグループ、大手税理士法人、スポーツアパレルなど複数の事業会社で管理部門、企画部門、秘書などを経験しながらカルチャーショックのシャワーを浴びまくる。2度の高齢出産を経て復職し、現在家事・育児・リモートワークに奮闘する毎日。無類のコーヒー好きで趣味はハンドメイド。いつかはインタビューされる側になりたい!
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整理収納アドバイザー(準一級)、防災士。2014年入社、当社で初めてライターに挑戦。キャリアのスタートは銀行員、その後リクルートグループ、大手税理士法人、スポーツアパレルなど複数の事業会社で管理部門、企画部門、秘書などを経験しながらカルチャーショックのシャワーを浴びまくる。2度の高齢出産を経て復職し、現在家事・育児・リモートワークに奮闘する毎日。無類のコーヒー好きで趣味はハンドメイド。いつかはインタビューされる側になりたい!
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