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気になるノウハウ!

ライター:一色先生

2026.09.29

「何をつくるか」より「何のためにつくるか」~オフィスデザインの発注で総務が押さえるべき10の要点

こんにちは。一色です。
オフィスの移転やリニューアルをするとき、多くの総務担当者が最初に考えるのは、
「どんなレイアウトにしようか」
「フリーアドレスにするか」
「会議室はいくつ必要か」
「どんな家具を入れようか」

といった具体的な空間の話ではないでしょうか。

もちろん、これらも重要です。しかし、オフィスデザイナーとの最初の打ち合わせで、いきなり「こんなオフィスにしたい」と伝えることは最適な進め方とは言えません。

今号は、オフィス構築の理想的な進め方について、オフィスデザイナーの目線で説明していきます。

まず、オフィスデザイナーが大切にしていることは次の3つの視点です。

①顧客のことを知る
②オフィスのことを知る
③働く人と未来を知る


では、オフィスデザイナーに相談するとき、最初に何を伝えればよいのでしょうか。

筆者は、次の10項目を整理しておくことをおすすめします。

1.何のためのオフィスなのか?

まず伝えたいのは、「なぜオフィスを変えるのか?」です。
これはシンプルですが、とても重要なポイントです。

「移転することになったから」
「契約更新の時期だから」
「社員数が増えたから」
というきっかけだけではなく、その背景にある理由まで伝えてみましょう。 例えば、
「社員数が増えて手狭になった」
という話の裏側に、
「部署間のコミュニケーションが減っている」
という課題があるかもしれません。

あるいは、
「古くなったからリニューアルしたい」
という話の裏側に、
「会社が変わったのに、オフィスだけ昔のままになっている」
という問題があるかもしれません。

「なぜ今、何のためにオフィスを変えるのか?」を整理すると、オフィスづくりの目的が見えてきます。

2.オフィスづくりで何を実現したいのか?

次に、「プロジェクトのゴール」を伝えます。
ここでは、できるだけ「空間」ではなく「実現したい状態」で伝えるのがポイントです。

例えば、
「フリーアドレスにしたい」
ではなく、
「変化に対応する組織で、部署を越えたコミュニケーションを増やしたい」

「会議室を増やしたい」 ではなく、
「プロジェクト型の仕事をしやすくしたい」

「ラウンジをつくりたい」 ではなく、
「偶発的な会話が生まれる環境にしたい」

という具合です。

「何をつくるか」よりも、「何を実現したいか」を伝える。 これによって、デザイナーからもさまざまな解決方法が出てきます。

3.会社はこれからどこへ向かうのか?

3つ目は、会社の未来です。
オフィスは、現在の仕事だけを支えるものではありません。会社がどのように始まって、これからどこへ向かおうとしているのかを知ることで、将来必要になるオフィスの姿も変わってきます。

例えば、
・新規事業を増やしていく
・海外展開を進める
・社員の採用を強化する
・若手人材を育成する
・部門横断型のプロジェクトを増やす
・働き方の柔軟性を高める

などです。

オフィスデザイナーにとって、こうした情報はデザインを考えるための重要な材料になります。
「現在の企業活動や社員数」だけを見るのではなく、
「この会社は3年後、5年後にどうなっていたいのか?」
を共有することが大切です。

4.企業理念・パーパス・ビジョン・バリューは何か?

4つ目は、会社らしさです。
企業理念、パーパス、ビジョン、バリューは何かを、ぜひ共有しましょう。なぜなら、オフィスは企業文化を表現する場にもなるからです。

例えば、
「挑戦」を大切にする会社なら、社員が新しいことを試せる環境。
「対話」を重視する会社なら、人が自然に集まり会話できる環境。
「専門性」を重視する会社なら、集中して仕事に取り組める環境。

というように、企業が大切にする価値観によって、求められる空間も変わります。
もちろん、企業理念を壁に大きく掲示すれば企業文化が生まれるわけではありません。
大切なのは、企業が掲げる価値観と、社員の日常の行動がつながることです。

5.社員は、現在どのように働いているのか?

5つ目は、現在の働き方です。
「理想の働き方」と合わせて「今、実際にどう働いているか」を伝えることが重要です。

例えば、
・出社とテレワークの割合
・固定席かフリーアドレスか
・会議の多さ
・オンライン会議の頻度
・個人作業とチーム作業の割合
・部署間の交流状況
・集中作業が多いのか、会話が多いのか

などです。

ここでは、できればデータも用意するとよいでしょう。
「社員の8割が週3日以上出社している」
「会議室がいつも不足している」
「部署間の交流が少ないという声が多い」
など、実態を具体的に伝えることで、より現実に合った提案につながります。

6.社員が抱えている「困りごと」は何か?

6つ目は、社員の困りごとです。
総務担当者だけの視点ではなく、実際に働いている社員の声を伝えます。

例えば、
「集中できる場所がない」
「オンライン会議をする場所が足りない」
「他部署の人と話す機会が少ない」
「収納が不足している」
「来客対応がしづらい」

といった具体的な問題です。 ただし、ここでも重要なのは、
「困りごと=解決方法」ではない
ということです。

「集中できないから個室を増やす」
と決める前に、
「なぜ集中できないのか?」
を考えてみる。
原因が音なのか、人の動線なのか、席の配置なのか、業務内容なのかによって、解決策は変わります。困りごとは、デザイナーと共に原因を探るための材料として伝えるとよいでしょう。

7.社員同士に、どんなコミュニケーションを生み出したいのか?

7つ目は、コミュニケーションです。
「コミュニケーションを増やしたい」という相談は、オフィスづくりではよくあります。しかし、ここでも「増やす」だけでは少し曖昧です。

誰と誰のコミュニケーションなのか。
どのような場面で必要なのか。
何のために必要なのか。

例えば、
「同じ部署内の情報共有を増やしたい」
「部署を越えた交流を生み出したい」
「上司と部下が気軽に話せる環境にしたい」
「新入社員が先輩社員に質問しやすくしたい」
「新規事業のメンバーが偶然出会う機会を増やしたい」
「社員と社外の人との交流を活性化したい」

など、目的によって空間のつくり方は変わります。

「コミュニケーション」という言葉を、具体的な人と人との関係に置き換えてみることがポイントです。

8.どんな行動を社員に生み出したいのか?

8つ目は、さらに一歩踏み込んで、社員の行動を考えます。
これはオフィスデザインを考えるうえで、非常に重要な視点です。

例えば、
「部署を越えて相談する」
「立ち話からアイデアを生み出す」
「プロジェクトメンバーが集まって短時間で議論する」
「一人で集中して仕事をする」
「気分を変えて仕事をする」
「社外の人と交流する」
などです。

オフィスは、社員に「こう使ってください」とお願いするだけではなく、空間そのものが行動を誘発することもあります。 そのため、
「どんな空間が欲しいか?」
だけではなく、
「その空間で、どんな行動が生まれてほしいか?」
まで考えてみることが重要です。

9.変えてはいけない「会社らしさ」は何か?

オフィスづくりでは、新しくすることばかりに目が向きがちです。
しかし、9つ目として考えておきたいのが、
「変えてはいけないもの」です。

例えば、
「社員同士の距離の近さ」
「部署内の相談しやすさ」
「来客を大切にする文化」
「集中して仕事に取り組む風土」
「社員が自分たちで環境を改善する文化」
などです。

新しい働き方を導入した結果、これまで会社が大切にしてきた良さが失われてしまっては本末転倒です。 だからこそ、
「変えたいこと」と「残したいこと」の両方をデザイナーに伝えておきましょう。

10.オフィスづくりの「制約条件」は何か?

最後は、少し現実的な話です。

予算、スケジュール、建物条件、契約条件、社員数、セキュリティ、法令、安全性などの制約条件を伝えます。これは、デザインの自由度を狭めるためではありません。むしろ、制約を早い段階で共有することで、その条件の中で何ができるかを一緒に考えられるようになります。

例えば、
「予算が限られている」
という条件があったとしても、
「全部を新しくする」のではなく、
「人が集まる場所に重点的に投資する」
「家具は既存品を活用し、コミュニケーションエリアを重点的に変える」
といった考え方ができます。重要なのは、制約も含めてデザインの条件として共有することです。

「何をつくるか」より「何のためにつくるか」

ここまで、10項目を紹介しました。改めて整理します。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
1.何のためのオフィスなのか?
2.オフィスづくりで何を実現したいのか?
3.会社はこれからどこへ向かうのか?
4.企業理念・パーパス・ビジョン・バリューは何か?
5.社員はどのように働いているのか?
6.社員の抱えている困りごとは何か?
7.どんなコミュニケーションを生み出したいのか?
8.どんな行動を社員に生み出したいのか?
9.変えてはいけない「会社らしさ」は何か?
10.オフィスづくりの制約条件は何か?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


この10項目を見てみると、実は「レイアウト」や「家具」という言葉がほとんど出てきません。 なぜでしょう?

オフィスデザイナーに相談するとき、最初から「答え」を決めてしまうのではなく、「問い」を共有することが重要だからです。

「フリーアドレスにしたい」
「おしゃれなラウンジが欲しい」
「会議室を増やしたい」
という要望のさらに奥には、
「どんな会社になりたいのか?」
「社員にどんな働き方をしてほしいのか?」
「どんな価値を生み出したいのか?」
という問いがあります。

オフィスデザイナーの仕事は、その問いを空間という形に変換して、そこで働く人の行動を変えていくこと、と考えることもできます。

だからこそ総務担当者にとって、オフィスデザイナーへの最初の相談は、
「こんなオフィスをつくってください」
ではなく、
「私たちはこんな会社を目指しています。そのために、オフィスには何ができるでしょうか?」 から始めてみる。

そこから、これまで気づかなかったオフィスの可能性が見えてくるかもしれません。

オフィスづくりは、空間をつくるプロジェクトというよりは、「会社の未来について考え、そこで働く人々の行動を変革するプロジェクト」といえます。

ここまで、読んでいただきありがとうございました。

一色先生

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ライタープロフィール

コクヨに42年間オフィスデザイナーとして勤務。オフィスデザインだけでなくオフィス研究やオフィス運営維持活動も担当。オフィスやカイゼンに関する講演は全国で50回以上実施している。2019年にはデザインスタジオを開業。オフィスのコンセプトづくりやコンペ提案のアドバイスを対応。
水彩画家として個展やカルチャースクールの絵画講師、公募展への応募なども行っている。2020年には初出品した水彩画が日展入選。はやくスケッチ旅行を再開したい。

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コクヨに42年間オフィスデザイナーとして勤務。オフィスデザインだけでなくオフィス研究やオフィス運営維持活動も担当。オフィスやカイゼンに関する講演は全国で50回以上実施している。2019年にはデザインスタジオを開業。オフィスのコンセプトづくりやコンペ提案のアドバイスを対応。 水彩画家として個展やカルチャースクールの絵画講師、公募展への応募なども行っている。2020年には初出品した水彩画が日展入選。はやくスケッチ旅行を再開したい。

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