ライター:マーシー
2020.11.13
新型コロナの影響で、ビジネスの現場に大きな変化が押し寄せる中、働く上での鍵となる「会社の空気」を醸成する中核的な役割を担う総務の現場に、今、大きな期待が寄せられています。そうした流れの中で果敢に改革を推し進める「戦略総務」としての働き方について、パーソルキャリア株式会社 戦略総務部マネジャーの今泉 創(いまいずみ はじめ)さんにお話を伺いました。
―総務業務を日々行うにあたり、(新型)コロナの前後で何か変化を感じましたか?
コロナ禍における業務のスピード感が、相当早くなっているのを強く感じています。リモートワークは無理だと言っていた会社も、今、全面的にリモートワークに切り替わっています。変化のスピードが圧倒的に早まった点が、大きな変化だと感じました。この春のコロナがピークの時期は、その環境の変化に、総務もなんとかして適用させなければならない、という状態にあり、生産性を維持するために、ひとまずはそこに総務が合わせに行った。その状態が一旦落ち着いた今、それらを最適化させるために、市場の変化を予測しながらさらに前に進む、という「先読みの段階」に入ってきたのではないかと。
元々、入社当時から、「いつでもどこでも誰でも、ストレスフリーでベストパフォーマンスを出せる環境を作っていきたい」というスローガンを掲げてきました。その世界観が、今向こうからやってきた感じがしています。
リモートワークの点をもう少し補足すると、「出社をしなければならないという前提」から「出社ができない前提」に変わりました。でも実際にやってみたら、家でもある程度できるじゃない、という意識の変化が起こった。リモートワークについては、パーソルキャリアでは元々、ある一定程度できる体制が整っていました。全員にノートPCを支給したり、セキュアな体制を構築するためのVPN(専用回線)を敷いていましたが、正直、活用度はそんなに高くはありませんでした。その後、前提が大きく変わった中で、活用度も飛躍的に高まりました。現状の出社頻度は、部署や職種によって異なりますが、出社が必要な職種を優先的に出社頻度を増やし、オフィスが密にならないように対策を講じています。
―「場づくりのプロ」としての総務の役割はどう変わりましたか?
「場づくり」については、コロナ禍の今もなお、総務の専門領域であると感じています。テレワークがベースとなった今、コミュニケーションのハードル自体を下げに行かないといけない。メールと携帯電話しかないと、コミュニケーションのハードルが非常に高いです。メールはいつ返ってくるかわからない、電話だと相手の状況がわからない、といったように。そのため、コミュニケーションツールのTeamsを活用して、リアルタイムで連絡が取れるようにすることで、ハードルを下げられるように工夫をしています。
また、パーソルキャリアでは毎年7月頃に、全国5都市でそれぞれの拠点ではたらく社員が一堂に会する社員総会を行っています。トッププレゼンテーションと、会社の掲げるMissionおよびValueを体現した社員を表彰する「Mission Value Award」(ミッションバリューアワード)のファイナリストたちによるプレゼンテーションを行っています。毎年大きな会場を借りたり、演出にこだわったりと豪華な会なのですが、今年は初めてオンラインでの実施となりました。総会の実施前はリアルじゃない場での温度感や期待値の面で不安もありましたが、オンラインだからこその「近さ」を感じることができました。総会を進めながら、参加者同士で「今のは面白いよね」などとリアルタイムでチャットで意見交換ができる。登壇者側にコメントや質問も自由にできる。これはリアルの場では難しいことです。コロナがきっかけとなり、リアルに集まれないという前提になったことで、逆に一体感が出た好例だと思います。リアルでやるのが当たり前だったものを、オンラインに全面切り替えするのは、きっかけが無いと難しいことでした。コロナだからこそ、このスピード感でここまで踏み切れた、というところはあったと感じています。
―その中で課題は見えてきましたか?
現在の「場づくり」の課題としては、ちょっとした質問が非常にしづらい。「ホッチキスの針ってどうなったんだっけ?」「この申請ってどうするんだっけ?」というような、些細な、でも頻繁に起こり得るちょっとした質問は、オンラインだと聞きづらいです。まして中途で入った人がそれを気軽に総務や他の関係部署に対して聞けるかというと、非常に難しいと思います。そこをどう解消するかという点を、現在検討中です。チャットボット(※)などを活用して、そもそも質問が発生しないような環境を作ったり、従来のマニュアルを改訂して申請自体が発生しないような環境に移行したり、などの取り組みを行っている段階です。
※チャットボット:短文でリアルタイムに会話する「チャット(chat)」とロボットを意味する「ボット(bot)」を組み合わせた言葉で、チャット上での人の問いかけに自動で答えを返すプログラムのことを指す(Sciseed社HPより引用)
やはり、非対面でゼロからの人間関係を構築し、その関係を維持して行くことは難しいです。今まで積み上げてきた対面での信頼の貯金があるから、何とか保てているところがあります。そしてその貯金はおそらく目減りしてきています。目減りを起こさないために何が必要か、という観点が重要になってきています。解決策の一つとして、私のチームでは毎日15分、Teamsの会議室をオンライン上に開いておいて、「入れる人は入ってきてください。入れない時は、欠席連絡不要です。議題も何もないです。好きなことを話しましょう」というような場を設けるなどの試みを続けています。先日は鬼滅の刃の映画の話などがテーマでした(笑)。毎朝15分、参加自由で、今日気になっていることを話し合い、その後に有志で、筋トレ会をやったりしている部署もあります。
―今後、総務として打ち出して行きたいことは?
総務をうまく回すコツがいくつかあると思っています。まずは失敗を許容する。総務には日々問い合わせがあるので、失敗を恐れていたら、何もできません。そこには大きなストレスがかかります。新しいチャレンジもできなくなる。失敗をしても、次にそれを繰り返さなければ良いだけなので、失敗そのものは気にしなくて良い、失敗してもそれを取り戻すくらいの成果を出せば良い、という雰囲気作りが非常に大切なのではないかと感じています。
あとはとにかく楽しく働く。先日、キックオフミーティングをしたのですが、図(下記)を書いて、チームメンバーに説明しました。「楽しく働けば、前向きに仕事に取り組めるようになる。そうなれば行動量が増えるので、より経験が積めるようになる。その結果、能力が向上して、より楽に成果が出せるようになる。そのことで、より楽しく働けるようになる」。このような前向きなスパイラルを作りたいよね、で、どこから始めるかというと、「まずは楽しく働こう」という話をしました。お互いの関係性の質を良くしていき、お互いにサポートしながらやっていこう。総務としてはそういうやり方が成果を出しやすいのかなと思います。
また、スピード感は大切だと思っています。定型業務はBPR・BPO(※)でどんどん圧縮して行って、新しい施策をどんどん進めて行きたいと思っています。
※RPA LOUNGE (by PERSOL)より引用
BPR=Business Process Re-engineering:業務本来の目的に向かって既存の組織や制度を根本的に見直し、プロセスの視点で、職務、業務フロー、管理機構、情報システムをデザインし直すこと
BPO=Business Process Outsourcing: 企業活動における業務プロセスの一部について、業務の企画・設計から実施までを一括して専門業者に外部委託すること
4か月ほど前に、総務メンバー全員で、RPA(※)を作ろうという勉強会を実施しました。それにより、メンバー全体の視点が変わりました。BPOするにしても、発注をする場合であっても、どこに無駄があるのか、工程の分析はどう行うべきなのか、という視点で見ていく必要があります。そしてその勉強会は業務の中でとても役に立ちました。自己啓発プラス日々の業務に役立つ、というような学習の機会を作る、などの取り組みを、総務としてやっていきたいです。
※RPA:「Robotic Process Automation /ロボティック・プロセス・オートメーション」の略語で、ホワイトカラーのデスクワーク(主に定型作業)を、パソコンの中にあるソフトウェア型のロボットが代行・自動化する概念(NTTデータ社HPより引用)
―総務パーソンに一言お願いします
コロナ禍で雑談する機会が少なくなりましたが、逆に「現場発信で動くこと」が増えてきました。現場社員がはじめたお昼のラジオチャンネルなどもある。役員と若手が交流するZOOMでの勉強会や飲み会なども実施されました。普段なかなか接点を持つ機会がない社員も気軽に参加できる。そういうことが今できてきています。マイナス面ばかりではありません。
総務は主体的に動ける部署だと思っています。主体的に動きさえすれば、非常にパフォーマンスを上げやすい可能性を秘めている部署なのではないか。
今、いろいろな環境変化が起きている中で、総務に求められるものも非常に大きくなりつつあります。総務にとっては今は大きなチャンスだと感じています。このチャンスを活かして主体的に動くことで、どんどん経験を積んでいけるフェーズに来ている。失敗を恐れず、是非ともアクティブに、果敢に前に進んでいって欲しいと思います。
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コロナ禍で働く環境が激変し、その変化への迅速な対応を迫られる中、会社の空気感をも作り出す役割を担う総務。そのユニークな存在への会社からの期待は、これまで以上に高まりつつあります。そうした中で、変化をチャンスと捉え、まさに文字通り「戦略総務」としての攻めの姿勢を崩さない今泉さんのお言葉から、これからの時代を生き抜く総務としての心構えのヒントを、数多く学ばせていただきました。これからのパーソルキャリア・戦略総務部の動きに注目です!
INFORMATION | 今泉 創 (いまいずみ はじめ) パーソルキャリア株式会社 人事本部 戦略総務部 総務グループ マネジャー 2009年日本大学卒業。人材派遣サービスの会社にて営業を担当。「会社をより良くするためには、社員を大切に考えることが必要だ」と感じ、転職して総務・法務・人事を兼務。休憩室作成やIP電話入れ替え、海外個社立ち上げ、コスト削減など幅広い業務をこなした後、2017年にパーソルキャリアへ転職。現在は、会社(従業員)がよりよい状態で活動できるよう、戦略総務として、固定概念に縛られず会社のリソースを最大限活用しながら様々な課題解決を行っている。 パーソルキャリア株式会社について パーソルキャリア株式会社は、-人々に「はたらく」を自分のものにする力を-をミッションとし、転職サービス「doda」やハイクラス人材のキャリア戦略プラットフォーム「iX」をはじめとした人材紹介、求人広告、新卒採用支援等のサービスを提供しています。2017年7月より、株式会社インテリジェンスからパーソルキャリア株式会社へ社名変更。グループの総力をあげて、これまで以上に個人の「はたらく」にフォーカスした社会価値の創出に努め、社会課題に正面から向き合い、すべての「はたらく」が笑顔につながる社会の実現を目指します。 |
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ライタープロフィール
2019年入社。金融・不動産・製薬などで総務業務に長年従事。オフィス好きが高じて、プライベートでも独自のオフィスツアーを企画するなど、オフィス訪問がライフワークとなっている。週末などに非営利分野の活動も精力的にこなしている。強くないのにお酒好き(焼酎派)。
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2019年入社。金融・不動産・製薬などで総務業務に長年従事。オフィス好きが高じて、プライベートでも独自のオフィスツアーを企画するなど、オフィス訪問がライフワークとなっている。週末などに非営利分野の活動も精力的にこなしている。強くないのにお酒好き(焼酎派)。
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