ライター:セッキ―
2026.10.27
日本の時を刻み続けてきた老舗ウオッチメーカー、セイコー。その精密な時計とブランドの信頼を、陰で支えているのがアフターサービスを担うセイコータイムラボです。今回は同社で管理部部長兼総務経理課長を務める諸星貴雄さんにインタビューを行いました。
2003年の入社以来、人事・労務やグループ会社での不動産管理など、一貫して「人と働く場所」に関わり続けてきた諸星さん。数あるキャリアの中でも、挑戦的だった「事業部配属」で成し遂げた注目の実績とは? 「当たり前」を支える裏側の苦労から、働く環境づくりのこだわりまで、バックオフィスから会社を支える情熱を詳しく伺いました。

――現在のセイコータイムラボの体制や、諸星さんのご担当業務について教えてください。
諸星氏(以下、敬称略):当社は、江東区の本社と修理拠点である大阪事業所の2拠点が存在します。従業員数は150名を超え、本社を中心に、修理技能士と、人事・経理・総務などの管理部門やアフターサービス、商品の販売企画・営業を担うスタッフが連携しながら事業を運営しています。
私自身は管理部の部長兼総務経理課長として、人事労務、総務庶務、経理財務、広報など9名体制をまとめています。

――新卒で入社されてからずっとバックオフィスを歩んでこられたそうですが、そもそも総務を目指されたきっかけは何だったのでしょうか?
諸星:高校生のころに自分が社会人になって働くことをイメージした際、仕事内容そのものはもちろんのこと、「働く環境」に強く関心を寄せたのがいわゆる人事総務部門に興味を持ったきっかけです。
就職活動をしていた2000年頃は、ITバブル崩壊などの影響で景気が低迷し、企業の倒産やリストラ、失業率の上昇など社会的に雇用問題が大きく取り沙汰されていた時期でした。大学で学んだ労働関連の法律などの知識を活かしたいと思って管理部門の募集がある企業を探しました。もともとブランドビジネスに魅力を感じていたこともあり、2003年にセイコーサービスセンター(現・セイコータイムラボ)へ入社しました。
入社後は、施設管理や人事労務といった総務全般からスタートして、社内やグループ内異動を重ねながら、一貫して「人と働く場所」に関わり続けています。
――グループ内での異動もかなり多岐にわたっているのですね。
諸星:そうなんです。2007年からは、セイコーホールディングス株式会社(現・セイコーグループ株式会社)でグループ全体の採用活動に2〜3年携わり、小売部門の原点である銀座和光(株式会社和光)に出向し、不動産管理を担当。さらにその後はセイコーホールディングスの不動産管理部門へ出向して、各子会社の事業所統廃合や移転、工事業者との調整、さらには土地・建物の募集や内見対応まで、まるで不動産屋さんのような実務も経験しました。
当時は「なんで自分が?」と思う瞬間もありましたが(笑)、人事と不動産(働く場所)って、実はすごく密接につながっているんですよね。キャリアを通して「人と働く環境」を体感しながら学べる、本当に良い機会になりました。
だからこそ、実務に合わせて資格をとることも大切にしてきました。人事領域では社労士、不動産では宅建、他にも衛生管理者やメンタルヘルスマンジメント検定など、自分の知識をアップデートし続けています。
――初めて事業部門に配属されたご経験は、かなり珍しかったのではないでしょうか。
諸星:はい、2012年にセイコータイムラボに戻ったときですが、約3年間事業部門に入って、サービス企画や修理メニューの検討、部品倉庫の移転などを担当しました。
特に思い出深いのが、新しいケアサービスとして2012年11月から導入した「コンプリートサービス」※の立ち上げです。ただ修理してお返しするだけではなく、外装をきれいに磨き上げてお返しするような付加価値があってこそ高級時計のあるべき姿なのでは、と施策が検討され、分解掃除と研磨をセットにしたメニューの導入を推進することになりました。
※コンプリートサービスとは、グランドセイコー、クレドールを対象とした内装修理・オーバーホールに加え、ライトポリッシュをセットにしたサービスです。ケース・メタルバンドの表面を整えて美しく仕上げるメンテナンスサービスのこと。


今でこそ、このサービスには大変好評をいただいていますが、当初は「求められる美しい仕上がりを安定して実現できるのか」「旧型から新型まで幅広いモデルに対応できるのか」といった不安の声が現場から多数あがり、とても記憶に残っています。
でも、現場の不安に寄り添いながら新しい価値を作っていくことは、事業部を経験できたからこそ得られた宝物ですね。
――日々、現場の社員さんたちを見守りケアする立場のバックオフィス視点ならではの新メニュー提案と思うと、総務を応援する筆者としては嬉しいです。
諸星:総務の日常業務というのは、どうしても「できて当たり前」と思われがちで、少し損な役回りに感じてしまうこともあります。例えば毎月の給料日にしても、社員のみなさんからすれば金額を確認して終了ですよね。でも裏では、勤怠を計算して、個別の口座へ振り込む処理をして、社会保険料をお預かりして官公庁に納めて……と、毎月間違いなく届けるために細かい作業の連続です。
どうしてもミスがあった時だけ注目されがちですが、自分たちがやっている仕事の目的や意味を自分なりに理解して取り組むことが、モチベーションを高く保つコツかなと思っています。
――裏にある努力の積み上げがあってこそ「当たり前」につながるんですね。社員の方々は総務さんをどのようにみているでしょうか。
諸星:採用サイトのリニューアルで若手社員がインタビューを受けているところを、たまたま耳にしたことがあったんです。「管理部ってどう見えてる?」といった内容の質問で、その時に「当たり前すぎて、ありがたすぎる」という言葉をもらえて。
自分たちの仕事の価値を見ていてくれる人、わかってくれている人がいるのだとわかって、すごく嬉しかったですね。
現在は、部署を越えて成果を称え合う「グッドパフォーマンス賞」(半期に一度の表彰)があり、管理部にも感謝を伝えられる場面があるんです。バックオフィスも含めた全員で会社を支えているのだという気持ちをみんなで共有するようにしています。
▼創立60周年記念式典にて、司会をしている諸星さん

――近年の大きな実績として、オフィスのレイアウト変更とカフェテリアの整備が挙げられますね。
諸星:2019年からコロナ禍を挟んで2022年にかけて、大規模なオフィス改修を行いました。事業が拡大して人数が増えたことで、食堂スペースやクリーンルームが手狭になっていたのがきっかけです。大型の研磨機や検査機器、GPS受信機などが複数あって引っ越しはなかなか難しく、少しの増床と限られたスペースをうまく使う工夫を重ねレイアウト変更を実施しました。
コンセプトとして一番こだわったのは、「ここで過ごす時間を快適に」です。ただ食事や休憩をするだけの場所から、「ちょっとあそこに集まりたい、集まろうよ」と思えるような空間にしたかったんです。
実際、入社3年目の社員からはこんな感想をもらっています。
「就職活動のとき、きれいなカフェテリアがあるのを見て『ここで働きたい!』と思ったのが入社の決め手のひとつでした。新人の頃は緊張もしていましたが、毎朝同期みんなで集まっておしゃべりしてから仕事に向かうのが日課で、朝の心の支えになっていました。」
――入社の決め手とまで言われたら嬉しいですね!修理の職人さんとスタッフさんとでは執務環境もだいぶ違うでしょうし、気を遣う部分も多そうです。
諸星:そうなんです。クリーンルームでは作業台やいす、照明、室温などの作業環境を整備する必要があること、また修理技能士は専用の防塵着を着て作業するので、出社・退社・お昼休みくらいしか社員同士の接点がありません。カフェテリアこそが職人とスタッフが出会える唯一の大切な場所なんですよね。

デジタルサイネージで会社の情報を発信したり、給茶機のメニューを増やしたりして、自然と会話が生まれるよう心がけています。業務後には任意参加の「OFF会」を四半期に一度ほど企画して、役員と社員の距離を縮める場づくりにも一役買っています。昨年のクリスマスイベントでは社長が自らサンタクロースに扮装してくれたんですよ。

今後は社内にとどまらず、時計業界の人脈を使って勉強会や講演会を開いたり懇親会を催したりして、外への発信も積極的に取り組んでいきたいと思っています。
さらに「社員同士の顔が見えるコミュニケーションづくり」も課題のひとつです。社員が100人を超えた今、特に修理技能士は防塵帽子をかぶっていることもありますし、顔と名前が一致しない人が出てきています。データベースの整備を進めて、お互いに認識を高めていける仕組みを作っているところです。
▼カフェテリア正面の廊下に設置されたデジタルサイネージ

――諸星さんにとって総務という仕事のやりがいや面白さは、どんなところにありますか?
諸星:総務の仕事は、みんなが当たり前に使っている場所やツール、働く環境を地道に用意する仕事です。単に言われた通りに机や椅子、モノを手配するのではなく、本当の役割は「そこで働くみんなの仕事や人生、過ごす時間そのものを支えること」だと思っています。
会社のルールという骨組みを整えて、みんなが笑顔で力を発揮できる舞台をつくる。大きな言い方をすれば、「会社そのものをみんなでつくっていく仕事」だからこそ、すごく面白いしやりがいがありますね!
――一つひとつは細かくても、会社そのものを作っているんだという認識で取り組めたら幸せですね!今日はありがとうございました。

セッキ―
ライタープロフィール
2014年入社、当社で初めてライターに挑戦。キャリアのスタートは銀行員、その後リクルートグループ、大手税理士法人、スポーツアパレルなど複数の事業会社で管理部門、企画部門、秘書などを経験しながらカルチャーショックのシャワーを浴びまくる。2度の高齢出産を経て復職し、現在家事・育児・リモートワークに奮闘する毎日。無類のコーヒー好きで趣味はハンドメイド。整理収納アドバイザー(準一級)、防災士。いつかはインタビューされる側になりたい!
セッキ―
ライタープロフィール
2014年入社、当社で初めてライターに挑戦。キャリアのスタートは銀行員、その後リクルートグループ、大手税理士法人、スポーツアパレルなど複数の事業会社で管理部門、企画部門、秘書などを経験しながらカルチャーショックのシャワーを浴びまくる。2度の高齢出産を経て復職し、現在家事・育児・リモートワークに奮闘する毎日。無類のコーヒー好きで趣味はハンドメイド。整理収納アドバイザー(準一級)、防災士。いつかはインタビューされる側になりたい!
オフィスの日常運営におけるニーズやオフィスの構築・移転・改修に関するご相談、お問い合わせに、経験豊富なスタッフがお答えいたします。お問い合わせ・資料請求はお気軽にどうぞ。