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気になるノウハウ!

ライター:一色先生

2026.10.30

2026年日経ニューオフィス賞受賞オフィスの傾向 「コミュニケーション」から「共創」へ。 多様な知を、新しい価値に変えるオフィス

こんにちは。一色です。

2026年8月、第39回「日経ニューオフィス賞」の受賞オフィスが発表されました。今年のキーワードとして掲げられたのが「共創」です。

これまでのオフィスづくりでは、ラウンジやフリースペースを通じた「コミュニケーションの活性化」が主流でした。しかし今年の受賞事例を見ると、単なる交流にとどまらず、多様な知識を持ち寄って「アイデアを具体的な形にする場」へと進化していることが分かります。

今回は、経済産業大臣賞を受賞した野村不動産グループをはじめとする注目の4事例から、2026年におけるオフィストレンドの核心を紐解きます。

1.コミュニケーションの先にある「共創」とは?

これまでのオフィスづくりでは、社員同士のコミュニケーションを活性化することで、クリエイティビティを高めることが重要なテーマでした。 例えば、部署ごとに分かれていた執務エリアを見直す、社員が集まりやすいカフェやラウンジを設ける、フロアをつなぐ階段を設置する。こうした仕掛けによって、普段は接点の少ない人同士が出会い、会話を交わす機会を増やすことが目指されてきました。

もちろん、こうした取り組みは今後も重要です。しかし、交流そのものは、必ずしもイノベーションを生み出す目的地ではありません。 例えば、異なる部門の社員が雑談をしても、それぞれが自分の仕事の話をするだけで終わってしまうことがあります。一方、互いの専門知識や経験を持ち寄り、共通の課題について考えることができれば、一人では思いつかなかった解決策が生まれるかもしれません。

つまり、共創とは、単に人が集まることでも、会話が増えることでもありません。異なる立場や専門性を持つ人々が協力し、新しい価値を生み出すことです。

この視点に立つと、オフィスづくりで考えるべきことも変わってきます。

「どうすれば社員同士が交流するか」だけでなく、「誰と誰が出会い、何を一緒に考え、どのような成果につなげるのか」。そして、その成果を生み出すために、空間と働き方をどう設計するかが問われるようになります。

2.経済産業大臣賞:野村不動産グループ本社オフィス――組織の境界を越える

▼画像引用元

2026年の経済産業大臣賞を受賞した、野村不動産グループ本社オフィス。「CROSS-BORDER」をコンセプトにグループ内の組織の垣根を越えた連携を促すワークプレイスとして構築されました。

特徴的なのは、回遊性の高い動線や、吹き抜け階段、カフェ、可変型の「UZU家具」などを通じて、社員が自然に移動し、さまざまな人と接点を持てるようにしていることです。

また、移転前には約2年半にわたってトライアルオフィスで新しい働き方を検証し、その結果を新本社に反映しました。空間をつくってから使い方を考えるのではなく、実際の働き方を試しながら、空間と運用のあり方を検討している点も注目されます。ここで重要なのは、オフィス内の交流を増やすことだけではありません。グループ内に存在する異なる専門性や事業知識をつなぎ、組織を越えた連携を生み出そうとしていることです。

企業規模が大きくなるほど、部門ごとの専門性が高まる一方、組織の壁によって情報や知識が分断されることがあります。共創を実現するには、こうした壁を乗り越え、異なる知識を組み合わせる機会が必要です。同社の事例は、オフィスの動線や家具といった空間の工夫に加え、移転前から働き方を検証するプロセスを通じて、組織の境界を越える環境をつくろうとしている点に特徴があります。

3.クリエイティブ・オフィス賞:パナソニックホールディングス研究・開発拠点Technology CUBE――研究開発の場そのものを実験する

▼画像引用元

パナソニック ホールディングスの研究・開発拠点「Technology CUBE」は、「この先100年、働く場、働き方そのものもR&Dし、未来を創る現在進行形の実験場」をコンセプトに掲げています。AI、デバイス、材料、生産技術など、多様な技術領域の研究開発をつなぎ、基礎研究から試作、量産化設計までを一貫して進める拠点です。

最大の特徴は、働く場や働き方そのものを研究開発の対象としている点です。自然と五感を融合した「NATURE SQUARE」や、データで快適性を支える「オフィスCPS」を導入するほか、エリアを街区に見立てて社員が主体的に場づくりに関わる仕組みを取り入れています。

共創において重要なのは、単なる交流の場にとどまらず、異なる専門領域を掛け合わせて試作や製品化へと結びつけることです。Technology CUBEは、研究プロセスをつなぐ「空間」と、社員が主導する「運用」の両面から、アイデアを確かな成果へと昇華させる環境を体現しています。

4.クリエイティブ・オフィス賞:みずほリース本社オフィス――一人ひとりの行動から共創を生み出す

▼画像引用元 画像引用元:https://www.nopa.or.jp/prize/contents/prize/2026/mizuho-ls.html

みずほリース本社オフィスのコンセプトは「Action! It's my turn!」。社員一人ひとりの能動的な行動を促すことを目指しています。

新本社では、分散していた営業拠点と本社を集約し、複数フロアをつなぐ内部階段やカフェ、コラボレーションエリア、イベントスペースなどを整備しました。社員同士の交流だけでなく、社外の企業との接点も生まれるように工夫されています。

また、テラコッタオレンジを基調としたインテリアや曲線を用いた照明など、五感を刺激する空間デザインも特徴です。開放的な環境での快適性や機能性を考慮し、デジタル技術も活用しています。

この事例から考えたいのは、共創を生み出すためには、社員が自ら行動を起こせることが重要だという点です。

どれだけ魅力的な交流スペースをつくっても、社員が受け身のままであれば、そこから新しい活動は生まれにくいでしょう。気づいたことを発信する、他部門の人に相談する、アイデアを提案する、協力者を募って実行する。こうした行動が、共創の出発点になります。

オフィスづくりでは、社員同士が交流できる場所を用意するだけでなく、交流から生まれたアイデアを実行へとつなげられる仕組みも考える必要があります。 みずほリースの事例は、空間の工夫を通じて、社員一人ひとりの主体的な行動を促そうとしている点が特徴です。

5.サード・ワークプレイス推進賞・クリエイティブ・オフィス賞:LIFESTYLE LAB TOYONOMA――共創の舞台を街へ広げる

▼画像引用元

ここまで紹介した3つの事例が、主に企業の本社や研究開発拠点を舞台とした共創であるのに対し、「LIFESTYLE LAB TOYONOMA」は、企業や世代の枠を越えた共創を考えるうえで興味深い事例です。 同施設は、サード・ワークプレイス推進賞と合わせてクリエイティブ・オフィス賞も受賞しています。 「これからのライフスタイルを生み出す参加型実証施設」をコンセプトに、大企業からスタートアップ、大人から子どもまで、多様な人々が立場を越えて参加できる場を目指しています。
特徴は、オフィスという単独の空間にとどまらず、隣接するシェア企業寮「TAMESU」などとも連携しながら、中長期的なPoC(概念実証)を通じて、新しいライフスタイルにつながるビジネスを生み出そうとしていることです。

企業内では、同じ組織の目標や業務上の制約があるため、発想や取り組みが一定の方向にまとまりやすい面があります。一方、企業や世代、立場の異なる人々が参加する場では、これまで想定していなかったニーズや価値観に出会える可能性があります。

もちろん、異なる人々が集まるだけで共創が実現するわけではありません。出会いをきっかけに、アイデアを試し、利用者の反応を確かめ、改善を重ねるプロセスが必要です。 TOYONOMAは、こうしたプロセスを実際の暮らしや地域との関わりの中で進めようとする点に特徴があります。共創の舞台が企業内のオフィスから社外、さらには地域へと広がっていることを示す事例といえます。


6.4つの事例から見える、これからのオフィスづくり
今回紹介した事例を整理すると、次の3つの方向性が見えてきます。

① 組織の境界を越え、知識をつなぐ
野村不動産グループやTechnology CUBEの事例に見られるように、部門や専門分野を越えた連携が重視されています。人が出会う機会を増やすだけでなく、異なる知識を組み合わせられる環境が求められています。

② 空間をつくるだけでなく、使い方や運営も設計する
Technology CUBEの現場主体の場づくりや、野村不動産グループの移転前の検証プロセスは、空間と運用を一体で考えることの重要性を示しています。共創を生み出すには、社員が空間をどう使い、どのような活動を行うかまで考える必要があります。

③ 共創の範囲が、社内から社外へ広がる
みずほリースの社外交流の仕掛けや、TOYONOMAの企業・世代を越えた実証活動からは、共創の相手が社内の社員だけではなくなっていることがうかがえます。顧客やパートナー、地域の人々など、多様な主体との協働が新しい価値を生み出す可能性を広げています。

これらの傾向を踏まえると、これからのオフィスづくりでは、交流の回数やスペースの利用率だけでなく、部門横断のプロジェクト数、新しい提案の実行件数、試作や実証につながったアイデアなど、交流がどのような成果につながったかを確認することも重要になるでしょう。


おわりに――共創を生み出すために、オフィスで何ができるか
2026年の日経ニューオフィス賞の受賞事例から見えてくるのは、オフィスが単に働きやすい環境を整えたり、社員同士のコミュニケーションを活性化したりする場所から、多様な人々が協力して新しい価値を生み出す場所へと、その役割を広げていることです。 ただし、共創を実現するために、すべての企業が大規模な本社移転や先進的な施設を必要とするわけではありません。

普段接点のない部門同士が一緒に課題を考える機会をつくる。社員がアイデアを試せる小さなスペースを設ける。社外の人々と意見を交わす場をつくる。こうした身近な取り組みも、共創への第一歩になります。

大切なのは、どのような空間をつくるかだけでなく、その空間で人々がどのように関わり、何を生み出せるようにしたいのかを明確にすることです。 コミュニケーションを生み出すオフィスから、共創によって新しい価値を生み出すオフィスへ。今年の受賞事例を参考に、自社のオフィスが人々の出会いをどのように仕事の成果へとつなげているのか、改めて考えてみてはいかがでしょうか。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

参考情報●参考資料 ・ニューオフィス推進協会:第39回 日経ニューオフィス賞 受賞オフィス ・パナソニック ホールディングス:Technology CUBEの受賞発表 ・三井デザインテック:みずほリース新本社オフィスの受賞発表 ・ニューオフィス推進協会:クリエイティブ・オフィスセミナー2026

●オフィスの広場 気になるワダイ! ・2021.08.25 日経ニューオフィス賞ってどんな賞? ・2026.03.24 受賞オフィスの共通項-2025年新設「サード・ワークプレイス推進賞」って?
一色先生

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ライタープロフィール

コクヨに42年間オフィスデザイナーとして勤務。オフィスデザインだけでなくオフィス研究やオフィス運営維持活動も担当。オフィスやカイゼンに関する講演は全国で50回以上実施している。2019年にはデザインスタジオを開業。オフィスのコンセプトづくりやコンペ提案のアドバイスを対応。
水彩画家として個展やカルチャースクールの絵画講師、公募展への応募なども行っている。2020年には初出品した水彩画が日展入選。はやくスケッチ旅行を再開したい。

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コクヨに42年間オフィスデザイナーとして勤務。オフィスデザインだけでなくオフィス研究やオフィス運営維持活動も担当。オフィスやカイゼンに関する講演は全国で50回以上実施している。2019年にはデザインスタジオを開業。オフィスのコンセプトづくりやコンペ提案のアドバイスを対応。 水彩画家として個展やカルチャースクールの絵画講師、公募展への応募なども行っている。2020年には初出品した水彩画が日展入選。はやくスケッチ旅行を再開したい。

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