ライター:セッキ―
2017.10.23
その日取材に伺ったのは、とてもいい香りが漂うマンションの一室。「こんにちは~」と出迎えてくれたおキレイな女性、その人こそが昨年起業したばかりの橋本さんでした。
“受付取次の手間を減らすことこそが真のおもてなし”
一貫して企業の受付業務を11年間。その中で「受付の効率化」の必要性を感じ、それは年々強くゆるぎないものとなって彼女を起業へと導きます。長年受付業務を愛してきた彼女がなぜ自らの仕事が必要なくなるようなことを思わせるシステム開発に臨むのか。その熱い想いを語ってくださいました。
―まずは「RECEPTIONIST」というプロダクトについて教えてください。
今年(2017年)1月に正式リリースした、iPadを利用したクラウド型受付システムです。来訪者があると、通常は部署の代表などの内線を鳴らし、当該部署のアシスタントさんなどが対応して本人へ伝える、というところが多いのですが、その取次をもっと効率化していくというものです
エントランスにiPadを置き、お客様に操作していただくことで、チャットツールやメールによって直接担当者に通知が届く、という流れです。これによって、
・取次の負荷を減らす
・来訪者の記録をデータとして残す
というようなことが実現できます。
ロゴや背景画像はカスタマイズ可能。一番多く使っていただくのは【担当者の名前で検索】で、初めの二文字を入力すると担当者の氏名候補が表示されるので、担当者を選択しタップ。さらにお茶出しの人数を把握するために来訪者の人数を入力するような仕様になっています。
↓この6つのメニューは内容をカスタマイズでき、減らすこともできます。
―たしかに用紙に記入するスタイルですと、後から来た人に自分が訪問したことがわかってしまうケースがありますよね。内線の場合も、自分の名前や企業名を聞かれてしまうので抵抗ある人もいるはずですね。
そうなんです。ですので、Pマークを取得した企業様には特にご好評いただいています。来訪記録がたまっていくのでプリントアウトしてそのまま保管できるのも便利です。
現在いろいろな企業に置いていただき、オープン以降延べ9万回の受付回数となっています。
―担当者が通知に気づかない、というトラブルはありませんか?
基本的にはお約束があることを認識しているので、今のところそういったトラブルのお声は特にありません。内線の場合、席の付近にいないといけないというストレスがありますが、お手洗いに行っていてもほかの電話に対応中でも問題ないわけです。また、本人以外にも周囲がフォローできるような通知の仕方が可能ですので、組織体制に合わせてご利用いただけます。
トラブルというよりは、ご要望を多くいただきます。例えば、当初は通知方法の種類をチャットワークとSlackのみでスタートしましたが、もっと種類を増やしてほしい、ですとか、来訪者の履歴で、閲覧制限する必要があり、権限分けしたい、など。随時追加開発をして毎月アップデートしている状況です。
―お忙しそうですね。
次は橋本さんのキャリアについて聞かせてください。もともと受付をされていたそうですね。
最初はトランス・コスモスという会社で受付業務を担当しました。IT系を好んで選んだわけではなくたまたまでしたが、その風通しの良さやスピード感が自分に合っていて面白いと感じました。また同社の受付業務にやりがいを感じたというのもあり、その後の転職を考えた時もIT系の受付を探すようになりました。
―受付業務はどんなところにやりがいがありましたか?
来客が多いことはもちろんでしたが、受付というのは自分たちのペースで仕事できないんですね。毎時00分は来客が殺到し、会議室の空き状況や社員の出入りを確認したり、お茶出ししたりとやることが盛りだくさんで、しかもそれを一気に処理しなくてはならない。前の会議が長引くこともありますし、臨機応変に対応できるかどうかがととても重要なのです。それができたとき、スムーズに会議をする姿を間近に見ることができて、自分に向いている仕事だと思いましたね。
また、やはり受付は女性の強みを発揮できる仕事だと思いますし、できる期間も限られているということもあって、やりがいを感じていました。
―確かに臨機応変な対応が必要ですね。単に「受付嬢」という言葉からはキレイなお姉さんが座っている、というイメージですけど。
そういうイメージがあると思いますが実は結構体育会系なんです!いろんなお客様や社員に対しても、みんなに平等に接しなくてはならないという点で気遣いが必要な業務でした。
―ITをいかに愛しているか、というのをブログに書かれていましたが、便利になる一方で受付という業務自体がなくなってしまうことや、人の温かみが減ってしまうのでは、という懸念は持ちませんでしたか?
それは本当によく言われるのですが、私たちは人をリプレイスするためのプロダクトを作っているつもりはないのです。
実際受付をしていたとき、取次の業務というのは全体の3割くらいのボリュームです。内線で取次する場合、アポが多い人ほど離席していることが多く、そうすると隣の席など代理の人が毎回自分の仕事の手を止めて電話を受けます。そのたびに手間や負担をかけることになり、もし確実に本人に伝言が伝わらなかったらずっとお客様をお待たせすることになります。
もし代理の人がいなかった場合、誰かが出てくれるまで待ったり携帯にかけたりと、ずっと探し続けなくてはなりませんでした。探している間はお客様も目の前にいらっしゃるので、お茶出しの準備などで席を立つことはできません。効率的でないうえに私たちのやっていることがおもてなしでもなんでもなくなってしまっている、ということに違和感を覚えるようになっていきました。
取次の手間をなくすこと、負担を軽くすることによって、逆に人にしかできないおもてなしの部分にもっと時間を割くことができる、というのが私たちの考えであり、このプロダクトの特長です。
―なるほど、取次業務をスムーズに進めることこそが真のおもてなし、というわけですね。
はい。11年間の受付経験から、効率化のポイントはよく理解しているつもりです。通常、受付に人をおくには最低3人必要ですが、受付システム+人というようにセットにすることによって2人や1人にすることができます。人の温かみを失うことなく受付システムを導入するというスタイルも可能なのです。取次をする側も受ける側も快適に仕事できると考えています。
―起業する=経営する、となると自分がやりたいこと以外に難しいこともついてきますよね。すごく勇気のいることだと思うのですが、そこに抵抗はありませんでしたか?
あまりなかったですね。起業したいとか社長になりたいという想いはもともとなくて、「受付の効率化」というテーマを自分がやらなければ誰もやらない、という想いがどんどん強くなっていったという感じです。受付を11年経験させていただいた土台があり、他にこれを考えている人がいない、それなら実現する一番の近道は起業だ、と。
たしかに採用や資金調達など今までやったことのないことも沢山ありましたが、それを一人で全部やる必要はないな、と思えたのでできたのかもしれません。
―ではあまり迷わなかったのでしょうか?
そうですね、起業することに対して迷いはゼロではなかったですが、反対する人もいなかったんです。周囲の起業家の先輩には是非やったらいいよとむしろ背中を押してもらった感じでした。
―今後の目標を聞かせてください。
「RECEPTIONIST」をより多くの企業に置いてもらい、もっと身近に感じてもらえるサービスにしていくのが今の目標です。また、日本だけでなく世界のいろんな場所で活躍できるプロダクトにしていきたいというのが次の目標ですね。
現在弊社はインターンを含めて13名ですが、会社自体ももっと拡大していきたいですし、オフィス環境も含めていきいきと働いてもらえる環境づくりを目指しています。
―期待しています!今日はありがとうございました。
Information | 橋本真里子(はしもと・まりこ) ディライテッド株式会社 代表取締役CEO 1981年11月生まれ。三重県鈴鹿市出身。武蔵野女子大学(現・武蔵野大学)英語英米文学科卒業。2005年より、トランスコスモスにて受付のキャリアをスタート。その後USEN、ミクシィやGMOインターネットなど、上場企業5社の受付に従事。受付嬢として11年、のべ120万人以上の接客を担当。11年という企業受付の現場の経験を生かし、もっと幅広い受付の効率化を目指し、16年1月にディライテッドを設立。17年1月に、クラウド型受付システム「RECEPTIONIST」をリリース。 |
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ライタープロフィール
整理収納アドバイザー(準一級)、防災士。2014年入社、当社で初めてライターに挑戦。キャリアのスタートは銀行員、その後リクルートグループ、大手税理士法人、スポーツアパレルなど複数の事業会社で管理部門、企画部門、秘書などを経験しながらカルチャーショックのシャワーを浴びまくる。2度の高齢出産を経て復職し、現在家事・育児・リモートワークに奮闘する毎日。無類のコーヒー好きで趣味はハンドメイド。いつかはインタビューされる側になりたい!
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整理収納アドバイザー(準一級)、防災士。2014年入社、当社で初めてライターに挑戦。キャリアのスタートは銀行員、その後リクルートグループ、大手税理士法人、スポーツアパレルなど複数の事業会社で管理部門、企画部門、秘書などを経験しながらカルチャーショックのシャワーを浴びまくる。2度の高齢出産を経て復職し、現在家事・育児・リモートワークに奮闘する毎日。無類のコーヒー好きで趣味はハンドメイド。いつかはインタビューされる側になりたい!
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