ライター:セッキ―
2024.07.30
物腰柔らかで照れくさそうな笑顔が印象的な蓑口さん。
ファシリティマネジメント(以下、FM)業務を担当するようになったのは、今から約5年前です。
総合人材サービスのパーソルグループにおいて、5つの戦略ビジネスユニットのうちの、【人材派遣・アウトソーシング】を中心に事業を展開しているのが、パーソルテンプスタッフ株式会社。同社だけで100を超える拠点が全国に広がっており、そこで移転やレイアウト変更などのプロジェクトが持ち上がると、調整に入る役割を担うのがガバナンス本部/総務FM部のFM室。
今回取材をさせていただいた蓑口洋介(みのぐち・ようすけ)さんは経理部から異動してきて約5年、40ものプロジェクトに携わってきたそうです。現在も、メインで担当しているプロジェクトのほか、新人メンバーのフォローにも入り、一つ終わればすぐ次のプロジェクトが舞い込んでくる…そんな多忙な日々です。
もともと経理一筋で10年もの間キャリアを積み重ねてこられた蓑口さんが、FM室に移ったきっかけはなんだったのでしょう?すごく気になりますね!
初めてのFM業務で、日々の動きもコミュニケーションのボリュームも経理の時とは全く違う様子が想像できますが、どのようにして対処し、乗り越えてこられたのでしょうか。どんなやりがいを感じてプロジェクトに取り組んでいるのでしょうか。たっぷり取材してきました!
――はじめに、ご経歴について教えてください。
蓑口さん(以下、敬称略):高校までずっと野球をやっていたんですが、大学に入って就職活動を意識し始めると、”社会で戦っていく自分の武器がない”と将来への不安を感じました。ちょうどその時期に先輩が税理士法人を立ち上げて、税理士を目指さないかと誘われまして、そこでアルバイトをさせていただきながら経済学部の特権を活かし、税理士試験に挑戦しました。
大学卒業後も続けて結果4年ほどそこでお世話になっていましたが、なかなか試験に受からなくて。やっと1科目受かった時に今後のキャリアについて考えて、当時のテンプスタッフインテグレーション(現:パーソルビジネスエキスパート)の経理部に就職したんです。その後どんどん組織が大きくなっていって、気がついたらホールディングスの財務本部になっていました。
入社してから10年間、経理部で経験を積み、今は税理士試験の会計2科目(簿記論と財務諸表論)の資格を有しています。
――経理で10年ものご経験のあと、なぜ現在の業務に異動されたのでしょうか。何がきっかけでFM分野に興味を持たれたのでしょうか。
蓑口:FM分野に興味を持ったわけではありませんでした。当時直属の上司だった人が今のパーソルテンプスタッフに出向して、「来ないか」と言われたのがきっかけです。
自分のことを一番理解してくれている上司でしたが、実は最初はお断りしたんです。10年積み上げた経理を離れて、全然違うFMという分野にいくということにすごく抵抗がありました。ただ、経理ひとすじで10 年を過ぎて、経理以外のことは全然わからない。事業会社に在籍したこともない。このままいくとすごくバランスの悪い人間になってしまうのではないか、という危機感も芽生えてきて。
一応税理士試験の会計科目は合格しているし、10年の経験があるから、上場企業で未経験の業務に挑戦出来るっていうのも貴重な機会だなとも思いました。もし失敗しても経理に戻ればまたやっていける。そんな風にあまり重たく考えずに思い切って飛び込んでみた、というのが2019年のことです。
――なるほどなるほど。36~37歳の頃ですね?たしかに退職して転職するわけではないですから、とてもいいチャレンジの機会ですよね。
蓑口:もともと冒険もあまりしないですし、究極の受け身人間なので(笑)、もしその上司に声をかけてもらえてなかったら、今もずっと経理部にいたかもしれません。
――初めてのFM業務ではどのような業務が待っていましたか?
蓑口:それがもう、いきなり横浜の支社で、4拠点を1拠点に集約する大きなプロジェクトを任されました。駅前の洗練されたビルでいろんなグループ会社から、うちも入りたい、うちも入りたい、と…当時はまだリモートワークはもちろん、フリーアドレスも導入していませんから、とにかく席数を確保して納める、ということだけを必死にやった記憶です。
さらに翌年には渋谷クロスタワーのプロジェクトで、初めてフリーアドレスを導入するレイアウト変更に携わり、その後も、フリーアドレス導入、登録者用ブースの個室化、働き方に合わせてフリースペースの拡充など、西に東に北にと飛び回ってきました。
▼初めてフリーアドレスを導入した渋谷クロスタワー(2021年3月)
――一気に忙しい日々が押し寄せてきたのですね。コロナ禍もあって働き方も大きく変わった5年でしたが、改めてどのようにお感じですか?
蓑口:大きなやりがいを感じています。もともとみんなで楽しく仕事をするのが好きな性格なのですが、経理では画面の前でひとり、数字と戦っていることが多かった。FM業務は、会社やその現場社員、関係者をよく知らないとできない業務。いろんな人と協力して大きな目標を達成する、そしてそれが形に残り、感謝されます。オープンの日には歓声があがって、使う人から直接感謝の言葉をもらえる。時間が過ぎてからも、そのプロジェクトでお世話になった役職者の方に別の拠点で会うと、改めてお礼を言われたりもします。経理では得られなかった感覚です。
――職種転向チャレンジ成功ですね。じゃあ経理に戻ることは・・・?
蓑口:まったく考えられませんね(笑)。
――私も経験がありますが、現場の意見を聞いてまわったはいいが収拾がつかない…といったこともありました。蓑口さんはどんなことに気をつけてコミュニケーションを取っていますか。
蓑口:このオフィス作るのはあくまで手段で、出来上がったそのオフィスで何をしたいのかどのように働きたいのか、という目的を忘れないようにすることと、もうひとつは、自分の意見をしっかり持つことですね。
プロジェクトでは、山積みの様々なタスクを期限までに一つひとつ意思決定していかなきゃならない。そのためには、現場から情報を入手して決めていく必要があります。もうしつこいと思われるくらい聞いて回るんですが、そのときに、自分の意見を持たないで行くということは、“質問する”という名の“丸投げ”行為になると思うんです。相手に回答を任せるのではなくて、「自分はこう思うんですけど、どうですか?」と。するとその通りだよ、と返ってくることもありますし、もっといい意見が出てくることもあります。
――質問をする前にあらかじめ自分の考えを深めて整理しておくのですね。
蓑口:はい。現場で働く社員たち以上に、そのオフィスのことも働き方についても、考えて考えて考え抜いてから質問をする。それを心がけています。
▼複数フロアの改修PJを手掛けた新宿マインズタワー(本社)
――傘下に会社がたくさんありますが、接点の少ない会社や社員さんもいますよね。普段のコミュニケーションはどうされていますか?よく目安箱的なものを置いて、オフィスに関する意見を集約するというやり方がありますが。
蓑口:そのあたりのことは今後の課題かもしれません。とにかく移転・新規開設・閉鎖が多くてひっきりなしにやっている感じなので…
ただ移転やレイ変が終ったあと、定期的に満足度調査を実施するようになりました。
また、2年くらい前にグループの拠点を大々的に回ったことがあります。当社102のうちの67拠点と、傘下11社のうちしばらく足を運んでいなかった拠点を合わせた約90拠点を、みんなで手分けして調査しに行きました。
――それは大変、一大プロジェクトでしたね。いろいろ発見があったのではないですか。
蓑口:はい、7~8年ほども経つと劣化が目立ってくるオフィスも出てきますし、当社の基準を満たしていない箇所も多く見受けられたので、業務に支障が出そうなところから優先的に対処しています。
なかなか地方の拠点では比較対象がなく、「こういうものだろう」という意識でやっていて、特に意見や要望も挙がりにくいことがわかり、今後はこちらから情報を取りに行かないといけない、と思い直しました。
――今後に対しての想いを聞かせてください。
蓑口:5年経ってFMの中でもだいぶベテランになったので、相談を受けることも多くなりました。僕がジョインした時、先輩にしてもらったのと同じように、新メンバーがプロジェクトを担当する際は、きちんとフォローするようにしています。
パーソルグループの今後のありたい姿として、「はたらくWell-being創造カンパニー」を掲げています。それを達成するためには、そこで働く自分たちのオフィスが“Well-beingなオフィス”であるべきと思っているので、いま一番関心が高いのはそこです。WELL認証の取得云々ではなく、少しでもWELLな環境になるよう、うまくその要素を取り入れたい。いま計画しているオフィスにもどうしたらWELLなオフィスになるか、と意識しながら取り組んでいます。
――今後のオフィス展開も、楽しみにしています!
ありがとうございました。
◆編集後記◆
終始楽しく、おだやかな時間が流れる取材でした。
「考えに考え抜いてから意見を交わす」という姿勢が印象的で、筆者も過去、上司に言われた「“どうしたらいいですか”という聞き方は絶対にしてはダメ」というフレーズを思い出しました。どんな分野の業務においても大事な心掛けだと思います。
ご自身では、“冒険しない人間、喋るのが苦手で内向的な人間”とおっしゃっていましたが、ここ3年ほど連続で、本部のキックオフの司会を頼まれているのだとか。人望の厚さを感じましたし、物静かな笑顔の裏に意志の強さや根気、粘り強さなどを感じる方でした。
よき理解者であった上司の方は、蓑口さんの性格・仕事の姿勢をよく見ていた方なんだなあと感心しましたし、思い切ってチャレンジし、自身のやり方でチャンスをモノにした蓑口さんの今後のご活躍にも期待したいです。
プロフィール | 蓑口 洋介(みのぐち・ようすけ)
パーソルテンプスタッフ株式会社/ガバナンス本部 総務FM部 FM室 大学在学中より先輩の立ち上げた税理士法人にてアルバイトしながら税理士試験の勉強を始める。2004年卒業後、1科目合格を機にテンプスタッフインテグレーション(現:パーソルビジネスエキスパート)に入社。経理部にて10年従事したのち、上司からの声掛けにより異動し現職。横浜支社の4拠点集約移転や、渋谷クロスタワーを皮切りにフリーアドレス化を伴うレイ変を多数実施、コロナ禍を受けて個室化を進めるなど、5年間で約40のプロジェクトを手掛ける。 認定ファシリティマネジャー、税理士試験会計2科目合格。 |
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ライタープロフィール
整理収納アドバイザー(準一級)、防災士。2014年入社、当社で初めてライターに挑戦。キャリアのスタートは銀行員、その後リクルートグループ、大手税理士法人、スポーツアパレルなど複数の事業会社で管理部門、企画部門、秘書などを経験しながらカルチャーショックのシャワーを浴びまくる。2度の高齢出産を経て復職し、現在家事・育児・リモートワークに奮闘する毎日。無類のコーヒー好きで趣味はハンドメイド。いつかはインタビューされる側になりたい!
ライタープロフィール
整理収納アドバイザー(準一級)、防災士。2014年入社、当社で初めてライターに挑戦。キャリアのスタートは銀行員、その後リクルートグループ、大手税理士法人、スポーツアパレルなど複数の事業会社で管理部門、企画部門、秘書などを経験しながらカルチャーショックのシャワーを浴びまくる。2度の高齢出産を経て復職し、現在家事・育児・リモートワークに奮闘する毎日。無類のコーヒー好きで趣味はハンドメイド。いつかはインタビューされる側になりたい!
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